シェンジュン村のブン。。
元気な村の子供たちの中で、あまり目立つ方ではないけれど、いつも集まってくるメンバーの中には必ずいる少年。
2度目のムアンシン、最終日も近づいていたある日の夜。
いつものように夜の町へ遊びにやってきた子供たち。昼間はちょっとした売店として使われている空き地のような場所、そこに置いてあった竹作りのテーブルの上に僕らは座っていた。その中にはブンもいて、この日、珍しく僕の隣の位置をキープしたブンは、腕をひっぱりながらずっと「歌を歌って!!歌、歌って!!」とせがんでいた。
何を歌おうか迷ったけど、僕はなんとなく頭に思い浮かんだ歌で、「花」と「上を向いて歩こう」をみんなの前で歌って聞かせてあげた。ギャーギャーとうるさかった子供たちは僕が歌っている間、ただ静かにじっと聞き入り、歌が終わるとわぁっと拍手をしてくれた。
それからいつも目立たないブンは、少しお兄さんのジャと一緒になって積極的に「あれがいいよ、やっぱりあっちかな?」といった様子で何かを選んでいるような話し合いを始めた。
しばらくして、今度は子供たちが僕のためにラオスの歌を歌って聞かせてくれた。
いつも大声ではしゃぎ叫んでいる子供たちなのに、歌を歌う彼らは少し違って見えた。そこにいつものわんぱくさはなく、力強さもないけれど、その代わりにとても澄んだ綺麗な歌声はどこか郷愁を誘うようで、僕の心に静かに染み入ってきた。
僕は日本の歌を歌い、子供たちはラオスやタイの歌を聞かせてくれる。
たった数分間だったけれど、いつも以上に心が通い合った気がした。
町へ出てきた子供たちを村へ見送ってやる帰り道、僕は珍しく積極的に接してきてくれたブンの肩に手をまわし、まだ小学生程度のブンは僕の腰まわりに手をあてて、肩を組んだつもりで真っ暗になった村への道を歌を歌いながら戻っていった。